ひのひかりゆらゆら

読書について。

スクールカーストごときで人生に絶望しないでよね『教室が、ひとりになるまで/浅倉 秋成』ネタバレ感想

一生、ゆりかごから墓場まで、ゴミみたいな馬鹿どもの支配は、共存は、永遠に続く。誰もあなたを一人にはしておいてくれない。 この物語のテーマとして、いわゆる「スクールカースト」のもとで苦しむ高校生たちの苦悩がある。 「みんなで」いいクラスを作ろ…

計算なんてふっとぶほどのかけがえのない存在『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ/辻村深月』ネタバレ感想

10年ぶりに再読。10年も経つと感想も変わる……というより、記憶力がないので覚えてなかった。ほぼ初見みたいなもの。 客観という呪い 私たちは、いつから大人になるのだろう。成人を迎えたら、就職したら、子供をもうけたら。 人によってさまざまに節目はある…

善良な人が生きる道は『傲慢と善良/辻村深月』ネタバレ感想

婚活の辛さ、苦しさ、厳しさが語られるので、婚活中の人は読まないほうがいいかも、と思った。 この感想のなかでは婚活についてではなく、タイトル通り傲慢と善良について書きたい。 善良な人は欲求の少ない人 この物語の主人公カップルの片割れの真実さんは…

ぐちゃぐちゃプロジェクトだけど後味は爽やか『残業禁止/荒木源』ネタバレ感想

今年度から時間外労働の上限規制というものがはじまって、残業時間もちょっと厳しくなった。 その中でただでさえ長時間残業してやっとまわしていたヤマジュウ建設という会社の現場が、さらに厳しい規制にどうなるか……というお話。 残業時間のレベル違いすぎ …

思わず仕事に危機感を持つ『君たちに明日はない/垣根涼介』ネタバレ感想

リストラの話。 タイトルなんか既視感……と思ったらボニー&クライドじゃん。 最近、本の感想を書くようになって、自分の本の選び方が3パターンあることに気づいた。 1.娯楽 これは簡単。単純に楽しみたいだけ。その時々で読みたいものは変わるけど、まあ楽し…

ほっと息がつけるエッセイ『とにかく散歩いたしましょう/小川洋子』ネタバレ感想

小川洋子さんのエッセイ集。Kindle Unlimited対象でした。 小川洋子さんといえば『博士の愛した数式』の著者というイメージが強い。 私は読んだ本の内容を片っ端から忘れていってしまう(それでせめて、と余裕があるときはブログに感想を書き留めている)。…

ダルトーンのタイルたち『何様/朝井リョウ』ネタバレ感想

『何者』の続編? スピンオフ? 的立ち位置の物語があるということで、読んだ本。 これだけだとまあフツーの短編集。6編。『何者』と合わせて読むと、登場人物により一層愛着がわく。 一編一編の感想を書いていく。 水曜日の南階段はきれい 光太郎くんの話。…

懐かしさと息苦しさ『何者/朝井リョウ』ネタバレ感想

『世にも奇妙な君物語』と『何様』を読んで、久しぶりに読み返したくなったので。 4人(5人?)の就活生が関わり合いながら就活する話。 懐かしさ 懐かしい! ちょうど就活生のときにこの『何者』を読んでいたんだけど、あのころよりも冷静に読むことができ…

コミュ障でどうもすみませんね『世にも奇妙な君物語/朝井リョウ』ネタバレ感想

『何者』って知ってる? 就活を題材にした朝井リョウの小説で、映画にもなったんだけど、私と同世代の就活生はかなりの人数があの小説を読んだり映画を観たりしてると思う。 そんで、この朝井リョウさんてどういう人なんだろうなとエッセイを読んだら、 この…

大人もかつて子供だった『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹』ネタバレ感想

最近ツイッターで本を探すのにはまってる。 自分が好きな本のタイトルで検索すると、そのタイトルと合わせて他のおすすめ本を紹介してる人のツイートが出てきて面白い。 この本もそれで見つけた。 担任の先生 担任の先生が、名脇役だった。 きっと私と同年代…

政治に興味が持てる本『総理にされた男/中山七里』ネタバレ感想

kindleunlimitedから。 売れない役者が総理大臣の代役をさせられる話。 ずいぶんご都合主義な展開だな! と思ったけど、内容は面白かった。 恥ずかしながら私は政治経済全く詳しくなくて、就活中も現在のドル円を答えられなかった苦い記憶がある。 ちなみに…

死刑制度を正面から考えるとは『 雪冤/大門 剛明』ネタバレ感想

死刑判決が下った息子の冤罪を雪ぐためにがんばるお父さんの話。 死刑制度 死刑制度。普通に生きてたらあんまり意識しないと思う。私も全然ちゃんと考えたことなかった。 小学生の頃に、死刑賛成派か反対派かにわかれて討論をしよう、みたいな授業があった。…

笑い声が出るエッセイ『パーネ・アモーレ イタリア語通訳奮闘記 /田丸公美子』ネタバレ感想

これイタリア語通訳者のエッセイなんだけどすごくよかった。 読んでて思わず笑っちゃう まず面白い。なんといっても面白かった。思わず声を上げて笑う。または人目があるので笑いを押し殺す。 なんていうの、こう、思わぬところから笑いのツボを刺してくる感…

最後の話が怖い『恐怖のお持ち帰り2 /福谷修』ネタバレ感想

kindleunlimitedから。 さらっと暇つぶしに読む感じの話だな〜と思って、とくに記録しとこうと思うとこはなかったんだけど、最後の話が怖かったので。 ていうかこの本は怖いとかよりも倫理的人道的にちょっとどうなの、と思う話が多くてちょっと嫌な気持ちに…

人柄が伝わってくるような文章『実話コレクション 忌怪談 /小田イ輔』ネタバレ感想

kindle unlimited対象になっていたので読みました。 kindle unlimitedはこういう系の本が割と充実してる印象。ベストセラー系の小説はほっとんどないけど……。 面白かったです! 読んでて安心感がありました。というのも、著者の小田さんが真摯に一つ一つの話…

安定して面白い短編集『赫眼(あかまなこ)/三津田信三』ネタバレ感想

三津田信三さんの短編集です。わりと話の流れはネットの怖い話でよくある感じのオーソドックスなやつでした。 あんまりインパクトみたいなものはなかったです。でも安定して面白く読めます。 ガレージに憑く幽霊 これぞっとしました。劇中劇のような感じで、…

「にゅう」コワッ…『厭魅の如き憑くもの 刀城言耶/三津田信三』ネタバレ感想

めっちゃ昔の人出て来る 菅江真澄に貝原益軒。大学受験の日本史Bで必死に覚えた名前がさらっと物語に出て来る。 実家の日本史のテキストを見返したくなりますね。日本史めちゃめちゃ苦手だったんですよね。 受験時代のテキストを引っ張り出して復習したとこ…

「うすらこわい」が絶望に変わる『凶宅/三津田信三』ネタバレ感想

時々(しょっちゅう)、無性にホラーが読みたくなります。 前から気になっていた『凶宅』を読みました。 レビューを読んで、あんまり怖くないのかな〜? と思ってたら、とっても怖くて面白かったです。 ちょっと油断してたけどめちゃめちゃ怖かったよ! 得体…