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読書について。

安定して面白い短編集『赫眼(あかまなこ)/三津田信三』ネタバレ感想

三津田信三さんの短編集です。わりと話の流れはネットの怖い話でよくある感じのオーソドックスなやつでした。
あんまりインパクトみたいなものはなかったです。でも安定して面白く読めます。

ガレージに憑く幽霊

これぞっとしました。劇中劇のような感じで、さらっと話されてるんですけど、あるレンタカーの店の車を借りたら、幽霊が出てきたっていうありがちな話があって。
その幽霊が取り憑いてたのが、車じゃなくて、その店のガレージで、つまりはどの車に取り憑くかは分からないのだと、そういう話だったんですけど。
えっ、怖!! そのお店で借りる限り、対策の取りようがないじゃないですか。怖すぎる、ロシアンルーレットか。

赫村の話

やがて陽が完全に沈んだところで 、ようやく例の村が目に入った ― ―その途端 、彼は慌てて Uタ ーンをすると 、一目散に逃げ出した 。なぜなら村の全ての家に 、真っ赤な明かりが点っていたから

「よなかのでんわ」で話される、これも劇中劇的な話。これ、この怖さすごーく共感できます。
おんなじような経験したことがあります。
いや、だいぶというかかなり違うんですけど、去年京都に旅行に行った時に、夜の伏見稲荷に行ったんですよ。
前に夜の伏見稲荷の写真を見たことがあって、その雰囲気がすごく素敵で、見たみたかったんです。
そしたらもうめちゃめちゃ怖くて、それはそれは怯えながら進んでいたんですが、ある程度行ったところで、鳥居を抜けたら、パッと一面真っ赤な広場みたいなところに出たんです。
なぜかそこだけ照明が真っ赤で。そこのちょっと前にいたお狐さまが、なんだかヌルっとした質感でこわいなー、と思ってたらその真っ赤な広場。 もう脱兎のごとく逃げ帰りました。8月も終わりの蒸し暑い夜でしたけど、震えあがりました。それくらい赤い照明ってインパクトがあるんだなーと思います。
たしか御膳谷奉拝所のあたりだったので、また行ってみたいと思います。
ヌルっとしたお狐さまは、眼力社というところにあるきつねの像で、昼間見たら多分怖くないはずです。でも夜はその滑らかなボディに光が反射してなんだか怖かったんです。ごめんなさい。
話が逸れましたが、これを読んだ瞬間あの時のことを思い出してとても共感しちゃいました。

不況

この小説の中に、ある男の勤めていた会社の業績が傾いて、どんどん仕事がキツくなってくるのになんのスキルもなく転職できない、みたいな話があって、それが一番怖かったかもしれません。
結局、我が身にせまる話が一番怖いんですね。でも、小説に求めるのは非日常なんで、安全なところからスリルを楽しみたいんですよね。


赫眼(あかまなこ) (光文社文庫)

赫眼(あかまなこ) (光文社文庫)