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読書について。

ほっと息がつけるエッセイ『とにかく散歩いたしましょう/小川洋子』ネタバレ感想

小川洋子さんのエッセイ集。Kindle Unlimited対象でした。
小川洋子さんといえば『博士の愛した数式』の著者というイメージが強い。
私は読んだ本の内容を片っ端から忘れていってしまう(それでせめて、と余裕があるときはブログに感想を書き留めている)。だから博士の記憶が80分しか持たないこと、博士と仲のよい男の子の頭のてっぺんが平らで、あだ名がルートであることしか覚えてないけど、すごく優しくて雰囲気のよい物語だったことは覚えている。
このエッセイもそんな感じで、とても雰囲気がよく、淡々としていて、それなのにずっと読み続けたい気持ちになる。
ご飯と味噌汁みたいな、昼下がりの匂いみたいな、そういう雰囲気、分かってくれるだろうか。
このうちの3つの感想を書いておこうと思う。

盗作を続ける

私は汗だくになって彼らの跡を追う 。書き出しの頃は間違いなく 、私が彼らに言葉を与えていたはずなのに 、いつしか私の方が彼らの言葉を聞き取ろうとして必死になっている 。自分の頭の中で作り出した人物たちが 、なぜか私など行ったこともない遠い場所から 、はるばる訪ねてきた人のように感じられる 。

登場人物たちの物語を書き写してるから、彼らに盗作だと言われたら言い訳できない、と言っているのだ。
いやそんな馬鹿な……。この人は天才なんだな、と思った。
もう少し丁寧に言うと、天がこの人に小説を書くと言うことを託したんだろうな、と思った。
こんな風に言ってみたいものだなあ。
小説書いてないけど。

自分だけの地図を持つ

小川洋子さんは方向音痴らしい。
私も方向音痴。きっと頭の中で立体を思い描く能力が低いんだと思う。

「今いるのは 、駅の北側ですか南ですか ? 」と聞かれ 、 「そんなこと分かりません 」と答えるしかなかった 。 「太陽を見ればいいんです 」 「太陽 ?そんなものを見たら目が焼けてしまうじゃありませんか 。ガリレオはそれで目を傷めたんですよ 」などと言って 、編集者にあきれられた 。

お、面白すぎる。

背表紙たちの秘密

題名同士の思わぬ出会いを演出するためには 、本棚は系統立てて整頓しない方が 、かえっていいのではないかと思ってしまう 。

いいなあ。いつか私も今より大きい家に住むようになったら、大きい本棚を買って紙の本を並べたい。
今はスペースがないのでほぼkindleだから、整理がしづらくてぐちゃぐちゃなんだよね。
その分、スマホひとつあれば読み返したい本がいつでもどこでもすぐ読み返せるというメリットはあるんだけど。