ひのひかりゆらゆら

読書について。

笑い声が出るエッセイ『パーネ・アモーレ イタリア語通訳奮闘記 /田丸公美子』ネタバレ感想

これイタリア語通訳者のエッセイなんだけどすごくよかった。

読んでて思わず笑っちゃう

まず面白い。なんといっても面白かった。思わず声を上げて笑う。または人目があるので笑いを押し殺す。
なんていうの、こう、思わぬところから笑いのツボを刺してくる感じ。
例えば、ホテルでマッサージを注文したら白衣を着た中年紳士が訪れたシーン。

彼氏はいとも面倒くさそうに 「私は職業でやってますんで 、裸にはまったく無関心なんですけど … …でも気になるようでしたら 、このタオルを使ってください 」と白いフェイスタオルを投げてくれた 。ボクシングではないが 、タオルを投げられたら 、いさぎよく降参するしかない 。

ここでボクシング。思わずドトールの中でフッと笑ってしまった。
こんな感じのテンションで、フフ、フフ、ハハハ!と笑いながら読める。

イタリア人のとんでもないイタズラ

日本でやったら大炎上しそうなイタズラ。

ヨ ーロッパ最古のボロ ーニャ大学の学生だった友人から抱腹絶倒の悪戯の数々を聞かされた 。(中略)学校の前のキオスクの意地悪おじさんへのしかえしに 、キオスクの屋根に鎖をかけ市電のフックに結びつけ 、発車と同時に屋根を飛ばしたこともある 。

ええ。
それはさすがにやりすぎでは。
ていうか、キオスクの屋根の修理とかはもちろん、市電側やお客さんに迷惑はかからなかったのか?
何より危ないのではないか。
なんてついみみっちいことを考えてしまう。
でもこんなイタズラをわらわら紹介されると、だんだん細かいことを気にしてるのがめんどくさくなってくる。
イタズラだけじゃなくて、イタリアについてのいろーんなエピソードが面白い。
私はあんまりイタリア人のイタズラを楽しめる度量はないけど、でも田丸さんというフィルターを通すと安全に愉快にとらえられてとてもいい。

プロ意識について

通訳という職業の体験談も多い。というかそれがメインなわけだけど、これを読むと生半な気持ちで通訳は目指せないな…と思う。
ほかの仕事にも通じることだけど、まだまだ何もできない半人前が周りの人たちのおかげで成長していくのはとても素敵。
誰にだって未熟な時があって、はじめてのお客さんがいて、冷や汗かきながらなんとか頑張って成長するんだよね。そうだよね。
私も社会人2年目の時、今よりさらにひどいぐちゃぐちゃの仕事ぶりで迷惑をかけたなあ。
その方に「最後には一番成長したと思う」っていってもらえたこと、すごく優しくて器の大きい人だなと思った。
その時の気持ちを思い出しました。