ひのひかりゆらゆら

読書について。

政治に興味が持てる本『総理にされた男/中山七里』ネタバレ感想

kindleunlimitedから。
売れない役者が総理大臣の代役をさせられる話。
ずいぶんご都合主義な展開だな! と思ったけど、内容は面白かった。
恥ずかしながら私は政治経済全く詳しくなくて、就活中も現在のドル円を答えられなかった苦い記憶がある。
ちなみに今でも答えられない。
だってそんなことより、消費期限切れてるのにまだ残ってる牛乳の活用法とか、限界まで楽なダイエット法とか、バズって一年経つのにどこ行っても品切れのアイシャドウはどの店舗に行けば売ってるのかとか、そっちの方が緊急性があるんだもん。
今まさに困っていることか、よっぽど面白いことじゃなきゃそもそも学ぼうなんて思えない。
その点この小説は面白いんで、政治経済勉強してみよっかなーと思うのにぴったりだった。

経済について

「景気を回復させるには 、どこかで眠っているカネを動かす必要があります 。たとえば 、日本の個人金融資産は千四百兆円という試算がありますが 、この金融資産の持ち主は 、言わずと知れた富裕層ならびに高齢者です 。そういう人たちがカネを遣ってくれないと経済は活発化しない 。だから過去の景気政策というのは大方 、金持ちにカネを遣いやすくするための方策なんですよ 」

なるほど……。国民全員が良くなることじゃなくて、あくまでも平均が引き上がることが景気がいいってことなんだって。
だから庶民が苦しくなっても企業とかお金持ちを優遇すれば景気は上がるんだって。
うーーん。こないだ読んだマンガ『キミのお金はどこに消えるのか』(井上純一著)では反対のことを言っていたんだけどなあ。
経済が縮小して想定通りに税収が上がらないって。
うーーん。どっちが正しいんだろう。景気が上がるというのが平均が引き上がるってことなら、結局優遇されたお金持ちが消費する分と、庶民が消費しなくなる分と、どっちが多いのかってことだよね?
そして、平均ってなんの平均のことなんだろう……景気の良し悪しって何で測るのか。
この本では、そこは明確にされてないんだよね。景気は文字通り気分だから、数値化するのは難しいって言ってる。 『キミ金』では、税収が上がるにはGDP(国内でいくらお金が使われたかという指標)を上げるしかないって言ってる。消費税が上がれば、民間のお金が減るからGDPも減る。だから税収が上がらない。ってことなんだそう。
たしかにこの本の中でも、

景気の良し悪しというのは詰まるところ 、カネの循環がいかに大きくいかに速くかということなんです 。

って言ってるから、同じことなのかな〜。
難しいな……もっといろんな本を読んで考えるべきことなんだと思うから、保留!

復興予算について

これは本当びっくりした。
復興予算がこんな全然関係ないものに使われてるなんて……。
小説の中のことってわけじゃなくて、実際こうなんだね。ググったらすぐ出てきた。

反捕鯨団体による妨害活動対策二十三億円 、道内を含む刑務所の職業訓練拡大三千万円 、(中略)あとご当地アイドルのイベントやらウミガメの保護観察やらにも計上されているな 。結果 、訳の分からん事業に総額一兆円以上の予算が計上されている 」 「おい 、何で復興予算を復興以外の目的に使えるんだ 。官庁施設の耐震化って何だよ 。武器車両整備って何だよ 。自殺対策って 、ご当地アイドルって何なんだよ 。そんなの絶対おかしいじゃないか 」

テロについて

ここが一番印象深かった。
衝撃的で怖くて怖くて、あまりの恐ろしさに夜中に姿勢を正して泣きながら読んでしまった。
次の日は朝4時に家を出なきゃ行けなかったのに、ここを読み始めたせいで全然寝られなかったほど。
アルジェリア日本大使館がテロリストによって占拠され、3時間ごとに人質となった日本人が射殺されていく。
それなのに、日本政府はなすすべもなく見ているしかない。
憲法9条がずっと取り沙汰されてるのは何となく知ってたけど、それはこういうことだったんだ、と思った。
平和ボケしてるっていうのも、こういうことを言っていたんだ。

「話を単純にしますとね 、政府の方針はヤクザ相手に一歩も退かないし 、交渉もしないということなんです 。ヤクザに手を上げようものなら報復が怖いし 、それを暴力主義だと謗る身内がいる 。交渉すればしたで 、裏切者だとか腰抜けなどとやはり謗る身内とギャラリ ーがいる 。ヤクザと闘わず 、身内やギャラリ ーからも責められない方法はただ一つ 、通りすがりの屈強な他人か 、日頃頼りにしている友人が駆けつけてくれるのをひたすら待ち続けることです 」 「つまりこの場合は 、アルジェリア政府に交渉を任せるか 、アメリカ軍の出動を期待するということですか 」

本当にこのシーンは読むべき。


総理にされた男

総理にされた男