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読書について。

思わず仕事に危機感を持つ『君たちに明日はない/垣根涼介』ネタバレ感想

リストラの話。
タイトルなんか既視感……と思ったらボニー&クライドじゃん。
最近、本の感想を書くようになって、自分の本の選び方が3パターンあることに気づいた。
1.娯楽
これは簡単。単純に楽しみたいだけ。その時々で読みたいものは変わるけど、まあ楽しめるならなんでもいい。
2.実用
今困っていることに対しての解決策を求めて買う。自己啓発本が多い。料理本とか、家事とか雑誌なんかもここ。ちなみに実践できるのは大体書いてあるうちの1つだけということも最近気づいた。
3.シミュレーション
この先こういうことがあるだろうけど、想像力がなくて自分の頭だけではシミュレーションできないときに読む。『何者』もそれ。

今回はこの3つ目のシミュレーション目的で読んだ。
『何者』を読んで、今の仕事ぶりを振り返って、このままではやばいかなあ、やっぱり……と思ったので。
そんなわけで、「わあ、やっぱりやばいんだなあ私……」ってドキッとしたところの感想を書いていく。

仕事と作業

リストラ最有力候補になる社員にかぎって 、仕事と作業との区分けが明確に出来ていない 。つまり 、自分の存在がこの会社にとってどれだけ利益をもたらしているのか 。たとえば営業マンなら 、自分が担当した商品の売値と仕入れ値の差額粗利から 、自らの給料 、厚生年金への掛け金 、一人割りのフロア ー維持費 、接待費 、営業車代 、交通費などを差っ引いた純益として考えたことなど 、夢にもないのだろう 。

うう、考えたことない。
でもそういえば、管理職の人はよく言っている。
たしかに、自分が担当した案件の粗利から、さらに自分にかかってるお金を引いてみるっていうことをやったことはないなあ。
ていうか、私一人当たりに一体いくらかかってるんだろう?
軽くググってみたら、社員一人当たりにかかるお金はだいたい基本給の2倍くらいらしい。
そして、新人採用にかかるコストはだいたい50万くらい。
うーんでも研修も結構行かせてもらってるからなあ…新人研修とあわせると少なくみても50万は絶対くだらない。
しかも1、2年目はほぼ直接案件やってないから、……。
新卒の初任給は平均20万6,250円。
計算面倒だから20万として、24ヶ月分。
20万×2×24=960万!!
しかもボーナスを足すと…1000万軽々超える!
ひええ。
研修とか採用コストも含めると1300万はくだらない感じ?
つまり、会社が私を雇っていてマイナスじゃないようにするためには、今の基本給の2倍の利益を出さないといけないし、その上に少なくとも1300万を返済(?)しないといけないし、ということである。
それによく考えたらこの1300万は年次低めのうちに稼がないと、年次上がって基本給も増えたらその分返済(?)が難しくなる。
しかもこれでも低めにつけてる。
だいたい間接部署もあるんだから自分の分だけまかなえばいいって話でもない。
やばい。何がやばいって、今どれくらいの利益を出してるかよくわかんないから、会社に行ってみないと比較もできない。
どうも、あと3年くらいで1300万返して自分が雇われててせめてマイナスじゃなくしようとすると、少なくみても月80万利益を出さなきゃいけないっぽい。

段階的に間に合わない 、という言葉は 、所詮は作業労力を指す言葉だ 。だが 、作業と仕事とは違う 。この仕事の本質自体で間違いを犯せば 、実際の業務で役立っている多くの人間の首を切ることにも繋がる 。それこそが 、取り返しのつかないミスだ 。 ― ―この男は 、仕事と作業の区別さえついていない 。

うーん。仕事と作業って、どう違うんだろう。

小心者はつらいよ

実を言うと陽子は小心者だ 。自分でも分かっている 。そして小心者には 、意外に怒りっぽい人間が多い 。あれこれとロクでもない想像をついアタマの中で先走りさせ 、その妄想に感情が振り回されるからだ 。

これはリストラと関係ないけどドキッとした。私も小心者で怒りっぽい。
以前会社のアンケート(だか心理テストだかメンタル調査)で、小心者で不満を持ちやすいのに細かいこと気にしなくて適当、みたいな結果が出た。
人間、図星を指されるとめちゃめちゃムカッとくるものですね。

人脈

三十五を過ぎてからの転職は 、ただ転職雑誌をめくって企業に応募すればいいというものではない 。不景気の時代ということもある 。なにもないところからのイチからの転職はまず無理だ 。今の業界で出来た人脈 。人のつながりから来る引き合いで同業他社に移るのが 、ベストの方法だ 。そのほうが今までのキャリアも生きるし 、相手側の組織も大切に扱ってくれる 。

ウワア出た。人脈。社外の人脈。無。南無三。
よく聞きますね、会社の外に居場所を作れと。社外の人と関われと。
そうなんだけど、そうなんだけど……。
どうやればいいのだ?

完全に理解すること

授業中に理解もせずに漫然とノ ートを取るより 、教師の言っていることをその場だけでもいいから完全に理解することだ 。そうすれば後日その教科書を広げるだけで 、そのときの内容をまずはほとんど思い出すことが出来る 。その該当ペ ージに載っている事柄を教師は説明しただけの話なのだから 、復習は再認の作業だけで済む 。

これもリストラとはあんまり関係ないけどハッとしたこと。
私はメモ魔なので忘れないようにとメモを取るのだけど、そうするとメモを取ることに集中してしまい理解がおろそかになる。
一度完全に理解することを目指して、備忘はそのあとってことね。けど、忘れる方を恐れちゃうんだよねえ。
初心に帰ってちゃんと理解することを目指そう。

突然くるその時

「念のために申し上げておきますが 、今回 、仮に会社に残られたとしても 、給料ダウンは確実で 、さらに来期以降にも予想される人員削減計画では 、退職条件は今よりも悪くなる可能性が濃厚です 。その点も 、現段階で踏まえておいて頂ければと存じます 」

シミュレーションと言う意味では、この言葉が一番真に迫って感じられた。
いつこんな風に言われたっておかしくないし、こう言われてからではもう遅いってことだ。


君たちに明日はない(新潮文庫)

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