ひのひかりゆらゆら

読書について。

大人もかつて子供だった『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹』ネタバレ感想

最近ツイッターで本を探すのにはまってる。
自分が好きな本のタイトルで検索すると、そのタイトルと合わせて他のおすすめ本を紹介してる人のツイートが出てきて面白い。
この本もそれで見つけた。

担任の先生

担任の先生が、名脇役だった。
きっと私と同年代なんじゃないかなーってなんとなく思う。
かつて子供だった大人。大人はみんなそう。
昔なんかの本で読んだ。
「大人だって元は子供だったはずなのに、いつのまにか子供の気持ちを忘れてしまう」って
たしかはやみねかおるだった気がする。
でも大人だって子供だった時のことを忘れたりはしないよね。ただ大人になったことを知ってるだけ。
だいたいこういう小説は、子供対大人みたいな構図になりがちだけど、この先生は元子供だったことがわかるように描かれてる。
それがちょっと生々しいというか、まだやわらかい傷あとを見てるような感じ。
高校生から見たらそりゃ大人だけど、でも大人のフリしてるだけだなって分かるのは私もそうだから。
ていうかみんなそうなんだなあ。
子供の頃、『おちゃめなふたご』シリーズを読んで、真夜中のお茶会に憧れてたんだよね。
大人になったら絶対真夜中に紅茶入れてお菓子用意して真夜中のお茶会やる! って思ってた。
けどいざ大人になってみたら、真夜中のお茶会なんてそんないいもんじゃなかった。
ただ寝るタイミング遅くなって紅茶飲んでお菓子バリバリ食ってるだけじゃんっていう。
それとおんなじ感じで、大人になったら両親や先生みたいに、しっかりした大人になるんだと思っていた。でも本当はみんな大人のフリしてくれてるだけだった。
もう私は私が生まれた時の父の年を越してしまったけど、子供の時に天井に背がつくほど大きく頼もしく見えたお父さんは、ただそういう風に振舞ってくれてただけだったんだな。

好きな一文

あたしは自分でも驚くほどに照れて 「えぇっ ! 」と叫んだ 。

この一文、よくないですか。
わかる! 私もそう叫ぶ!
照れたときの表現って色々あるけど、これは初めて見た。現実にはよくあるけど小説にはあんまりない。
昔、雑誌コバルトで花村萬月が言ってた。驚いて瞠目するのはやめてねって。手垢で真っ黒ってことね。
まあとにかくこの一文がすごく好き。表現力ってこのこと! って思う。自分でも驚くほどに照れてるんだよ。それでえぇって叫ぶんだよ。たぶん顔はニヤっとしたと思う。あー同じように感じた人いないかなあ。
もしかして結構ある表現だったりして。まあいいの。こういう一文に出くわすのが読書の楽しみの一つだよね。

なんか全然本筋に触れてないけど、うーん。ちょっとあまりにも悲惨で……。
『「子供を殺してください」という親たち(新潮文庫)』ってあるけど、あれを思い出した。
藻屑が健気なだけ、悲愴。